馬のモツ煮一筋で70年
昭和の富士吉田を見つめてきた味 〜富士吉田市 新田川〜

 昨年ブームを呼んだ甲府鶏モツ煮。しかし富士五湖地域を含む郡内地方では、ご家庭でも居酒屋さんでもモツ煮と言えば断然“馬モツ”。この馬モツ煮の郡内地域における先駆け的な存在が、富士吉田市西裏界隈にある『新田川』です。のれんが無ければ、お店を見つけるのもひと苦労。入口を開ければすぐに大きな鍋とご主人・入倉さんの笑顔が目に入る。メニューは1本70円のモツ煮と馬刺しのみ。味噌や砂糖でじっくり煮込まれたこのモツをつまんでお酒を一杯、というのが、今も変わらぬ新田川のスタイルです。
「昭和17年頃に親父が東京・深川から牛モツ煮を学んできたのが最初。馬は60数年ぐらい前に、お肉屋に教えてもらったのが最初かな。」とご主人。珍しいものだったため、1本10円と当時では高価なものだったのだが、売れ行きは良かったとか。「元気が出る」「病気にならないと買ってもらえない」「寝小便が治る」等々、当時の常連さんも様々な表現で、このモツ煮を愛してくれました。今でも残る最高記録は1人で120本。最盛期には1日1000本以上仕込むことも珍しくなかったそうです。
「お袋が切り盛りしていた当時は、富士山の強力さんとか定期便の運転手さんとか、いかにも食べそうな人が多かったね。」と入倉さん。今はマナーも大分良くなった(笑)ということだが、当時の活気を想像できるエピソードをたくさん教えてくれました。「もちろん時代もある。今はお持ち帰りで家族と…という人も多いよ。」とのこと。それでも、ここのモツ煮を、というお客様が来てくれるのが嬉しいと言います。きっとこれからも、この味は街の歴史を見守ってくれるでしょう。 
新 田 川
山梨県富士吉田市下吉田796
0555-22-3513 営業は午後5時より

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